2008/06/18

デジタルはいったい未来に何を残してくれるのだろう

デジタルはいったい未来に何を残してくれるのだろう
私がまだ30歳の頃、初めて使ったストレージはカセットテープだった。
知り合いの電気屋さんで100行ほどのプログラムを書き込んで遊んでいた。走らせると画面に線や丸や四角が描かれる。それだけのもの。これを保存しておくのにカセットテープを使う。音楽用のカセットテープなのでカセットデッキでも再生できる。ピーピー ガガピー ピキピキ ガー・・と甲高い音がした。

カセットテープの次はフロッピーディスクだ。
私が買ったパソコンには標準でフロッピーディスクは付いていないのでフロッピーディスクドライブも一緒に買った。両手で抱えなければ持てないような大きさで、値段は20万円近くしたのではなかったか。
この頃、ハードディスクなるものが存在することは知っていた。とても高速らしい。パソコンに固定でディスクを入れ替えできないけれど容量はフロッピーの100倍もあるぞ。ハードディスクに憧れはしたがフロッピーで充分であった。フロッピーディスクはカセットテープと比べたら比較にならないほど高速で扱いやすかったから。あ、そうフロッピーといっても5.25インチだから130cmほどの大きさでぺらんぺらんのやつだ。
当時の文書データもMIDIデータもこのディスクに入っている。捨てずに置いてあるが、事実上使い物にならない。もう当時のパソコンはない。もし5.25インチのフロッピーディスクドライブの中古品があったとしても、何十年も夏冬を過ごしてきたこのぺらんぺらんの磁気ディスクはもう記憶喪失になっているだろうと思われる。

あんなこんなで時代は変る。どんどん変る。
MOの230MB
CD-Rの600MB
こんな製品が出るたびに感激と不安。
そしてウェブの時代。
さらに容赦なく時代は変わり2008年6月の現在。
グーグルのGmail 6.8GB
マイクロソフトのSkyDrive 5GB
しかも無料。
あの頃、私の部屋に届いたPCに接続して使い始めたフロッピーディスクの何千倍の容量。いや、何万倍かもしれない。
とんでもない時代になったと感じるのは私のようなオヤジだけ。こんな時代が当たり前と思う年代の若者はこんな時代が当たり前なんだろうか。

インテルの創業者であるゴードンムーアが提唱したムーアの法則というのがある。
半導体の性能はは1年半で2倍になる」と。
この提唱は1960年代の話。
この法則はもちろん物理的な法則ではない。経験・知識からの予測である。 何十年もたった今でもこの予測がほぼ当たっているからこそ「ムーアの法則」が有名になったのだろう。
だけど、すごいのは、予測が当たっていることではない。性能はどんどん上がる、機器の値段はどんどん下がる。なんかすごいことになっていっている。そして、まだまだ続くこと。予測が当たろうが外れようが関係ない。すごいのはこの「すごさ」だから。

ああそう。さっき「感激と不安」と書いた。感激はわかるがなぜ不安もいっしょにやってくるのだろう。すごいことになっていってる。この裏になぜか不安が見え隠れしている。
文書も画像も音楽もデジタルになっていく。その容量が増えるたびに何かしら得体のしれないもやもやとした不安。うまく説明できないけれど、おそらくこういうことだ。

デジタルは劣化しない。私は技術屋ではないがこれくらい分かる。
だけど、デジタルは1,000年後の人類に情報を伝えることができるのだろうか。もし、伝えることがきるとしてもあまりにも情報が多すぎて、必要不要の区別が付かないので結局は総てがゴミ。何百億、何千億個と並んだ1と0は、未来の人々に「私たちの生活や喜怒哀楽」を伝えることができるのだろうか音楽・彫刻・絵画はどうだろう。

アナログは劣化する。だけど、遺跡から発見される木棺の文字。クロマニヨン人の壁画。これらはアナログだから残ったのではないか。「劣化」は違う言い方をいすれば「残る」を意味する。
劣化しないデジタルは劣化しないかわりに突然、読み取れなくなる。読み取れなくなるということは無くなったのに等しい。デジタル情報はいつか突然なくなるのだ。

1000年後マイクロソフトはどうなっているだろう。
グーグルが保管している途方も無い数の文字列とRGBを数値化したデータは、今後どうするの。貯め続けるの。そして永久保管するの。
100年も続く老舗の企業、優秀な企業。つまり企業が100年続くということはとても珍しいことなわけだ。まして何千年もつづく企業はあるのだろうか。
私が死んでもその蓄積されたデータは永久に残るのか。
そもそも永久とはどういう意味だったか。

「はいWebでの保管サービスは明日からおしまい。企業の責任としてストレージに溜め込んだデータはそのまま保管します」とか。でもその保管ストレージは何年間動き続けるだろうか。いくら長くても十数年で壊れるだろう。デジタルデータは入れ物がなくなると存在しなくなる。劣化しないけど無くなる。

地球ができて、生物が発生し、人類が誕生した。
米の作り方。マンモスの倒し方。嬉しさの度合い。悲しみの深さ。恋人への思い。ピアノの音。息子が書いた絵。青い空。太陽がはどの方向から昇る。月の影はウサギに似ている。私たちが知りえる事、「僕の心の柔らかい場所を今でもまだ締め付ける」のは感情・心・思い・・・それらはすべてアナログではないのか。

デジタルはいったい未来に何を残してくれるのだろう。



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