2013/10/06

息子のタイムマシン(短編小説)

(前編)
息子のやろう、またタイムマシンを買ってきやがった。
だいたいこの数年の間、おもちゃのメーカーがタイムマシンを売り出すようになってから小遣いはほとんどそれに使ってる。これで、もう3台目だろうが。
そういえば、父さんがタイムマシンの免許をとったのは20歳過ぎだったかなあ。あのころはマシンも高くて中古を買った。 中古といってもボーナスでやっと半分支払っただけだもんな。
いやもう、とんでもない時代になったものだ。あいつが中学に入学する時に、どうしても欲しい、友達はみんな持ってるとかでしかたなく買ってやったもんだ。 それがなんだ、高校生になってアルバイトを始めたのはいいけど、その金をみんなタイムマシンに使ってしまうとはな。
おもちゃメーカーが販売してるといったって、最近のマシンは腰をぬかすくらい高性能だ。もともと過去行き10年、未来行き10年という制約がついてる。 それだからこそ免許がいらない。それなのに、どこかのメーカーがタイムアクセラレータとかいう名前で100年のタイムトラベルが可能なオプションを作った。 そいつを取り付けるとスッ飛びマシンになる。よく分からんが、こんなオプションは法律にひっかかるんじゃないのか。
しかしまいった。父さんが旅行の時に使う4人乗りのマシンは50年しかいけないのに。しかも加速がわるい。父さんも新しいのが欲しいよ。
あ、そうそう。息子のもってるマシンは一人乗りなのに、彼女かなんか知らんが時々二人でトラベルしたりしよる。ばかもんが。色気付きやがって。 また、検問で捕まるぞ。反則金を払うのに母さんから金をもらってるのを父さんはちゃんと見てたぞ。
おいこら、どこへ行く。や、またトラベルか。もう夜も遅いのに、宿題はしたんか。え、こら。
行ってしもた。 また彼女とデートか。2098年へ行くんだろ。どうも2098年の8月3日には高校生のタイムトラベラーが集まる広場があるらしい。週刊誌で読んだことがある。 不良が集まってるんじゃないのか。そこで宿題をするだと。
あほらしい。嘘をつくならもっとマシな嘘をつけ。それより彼女とはどんな関係なんだろうか。あんな事したり、こんな事したり。いやんもうばか。あはは。
あっ。母さん、今の聞いてた? そう。失礼しました。
おれは若者の性について真剣に考えてるんだ。
エッチもいいけど妊娠したらどうするんだ。子供を生むときは現在で産めよ。とか言ったって息子が産むわけじゃないんだから、今度彼女に会ったらちゃんと言い聞かせとかないとな。 タイムトラベルしてる最中に赤ん坊を産んだら手続きがとんでもなくやっかいだからな。だいいち赤ん坊の年がマイナス15歳とかになったらどうする。5歳で成人式に行くのか。
まだマイナスならいい。過去で出産したら生まれてすぐに70歳てな具合になるぞ。その赤ん坊が女の子だったとしましょいな。 それでまた器量好しの別嬪さんになったとしましょいな。ね。 いくら別嬪さんでも、いわゆる年頃になって95歳の女と結婚してくれる男がいるか。えぇ、そうだろ。
だから、おもちゃのタイムマシンは青少年を破滅に向かわせる機械なんだ。
おれも、なかなかいいこと言うだろう。な、母さん。おい、母さん。
あっ。
なんや、寝てるんか。
(後編へ続く)



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