2008/04/13

自分をグーグル化する方法

効率が10倍アップする 新・知的生産術 自分をグーグル化する方法
「自分をグーグル化する方法」という副題がついた本を買った。

会社の帰り、本屋に立ち寄るといつも2~3冊ほど買い求めるがそのうちの一冊がこの本。いわゆるビジネス本というやつ。
はっきり言って「グーグル化する」するという副題だけで面白そうということで買っただけなんだけれども、読み進めれば読み進めるほど何か鬱陶しい感じが積もっていく。
なぜだろう。
3分の1ほど読んで、部屋の隅に転がっていたが、「いや、ちゃんと最後まで読まなきゃ失礼」と、3分の2から続きを読み始めた。

やっぱり息苦しい。

少年雑誌のような構成。自慢話。箇条書きにするほどのことはない箇条書き。しかも的を射ない箇条書きの連発。

こんなふうに息苦しいと感じるのは私だけか。
この本の副題とダブってしまってお笑いではあるけれども、グーグルで検索。評価を調べてみた。
Webでの評価はいい加減なのが多いのは承知の上である。本を売ろうとしているページは最上の評価が載っているし、2ちゃんねるでの評価はこき下ろしである。両極端なので落ち着いて世間の意見を読み取る必要があるくらい判っているつもりだ。

で、そんなこんなで、あっと驚いた。ベストセラーの本だった。
こんなに売れている本だとは知らなかった。そして納得もした。すごく売れてる本というのは読書家に売れているのではなく、普段本を読まない人に売れているんだね、やっぱり。

普段本を読む人と読まない人では読まない人の方が多い。普段本を読まない人は内容の良し悪しとは関係なく、はやりの本を読む。その数はやたらと多い。
普段本を読まない多数の人達によって、はやりの本はどんどん売れる。出版社にとっては好循環も好循環。
アクセル全開状態だ。

本を読んで感動したことのない人達は、どんな内容であっても感動した感動したを連発する。
どんどん売れる本は良い本なのか駄作であるのかなんて論じるとバカにされるかヒガミ根性の持ち主と嫌われる。「はやりか はやりでないか」「売れているか 売れていないか」だけが話題になってしまう。
売れている本を読んで「良い本だ」と評価することは自分を正当化し、かっこいい人間であることをアピールしているに過ぎずなかったりするのだ。

かようなわけで、おそらく、この本は普段本を読まない人に爆発的に売れているのだろうと思われるのだが、どうだろう。
または「自分をグーグル化する方法」などというキャッチコピーらしき宣伝文句につられて買った中年男もたくさんいるかな。

もうひとつ違った見方をしてみよう。
経済評論家、慶応義塾大学卒業、19歳で公認会計士2次試験突破、早稲田大学大学院商学研究科博士後期課程在学中。公認会計士、戦略コンサルタントなどを経て経済評論家として独立・・・2005年ウォールストリートジャーナルから「世界のもっとも注目すべき女性50人」に選ばれる。などなど・・・
と、著者紹介にある。著書も多数。

これがいけない。
こんなすごい人は、とんでもなくすごいことを書いていると読み手は思う。
「ホームレスなんとか」を例に出すのは場違いだけれども、若い漫才師がこんな本を書いたのならそれこそ尊敬するし、ぶっちぎりファンになる。
でも違う。この本は少しだけすごいことを書いているだけであった。
一貫して物足りなく息苦しいのはこのせいだったようだ。
著者の輝ける経歴はその著作内容とうまくマッチしていない。そして、こんなすごい人でも書く内容はこの程度なんだという安心感も一緒についてくるのは面白い。この安心感はなぜか最後まで読んでみようとする原動力にもなっているから不思議な本ではある。さすがにベストセラーか。


プロ野球のテレビ観戦で素人が選手のミスを批評できるように、千のうちの一つの不手際を凡人が批判することは容易い。
十の能力しか無いのに千の能力がある人物を批評するのだからおっちょこちょいも甚だしいが、世の中これはまかり通っている。私も図に乗って、まかり通っている儀式に則り。痛くもかゆくも無いであろうたわ言を少しばかり。

「集中管理とは情報を一定の物理媒体、例えば巨大なHDDにすべてを格納することで散逸を防ぐことができる機能です。」(書籍より引用)
そもそも、「集中管理」「物理媒体」「HDD」「散逸」なんて言葉は、読む人の生活環境や職種によってはまったく聞き覚えのない言葉。よく分からない人はカッコイイ表現とでも思うのかしら。

巨大なHDDという表現は少し間抜けな表現なのだけれど、そんなことはどうでもよくて、「集中管理とは」の定義に誤解があるようだ。
一つの物理媒体(HDD)に情報を収納することを集中管理であると読み取れてしまう。
同じ情報があっちにもこっちにもあって、それが編集されて少し違う情報になり、それがコピーされてまた編集されてがくり返さる。その結果、なにが本当か、原本はどれか最新版はどこへいった状態になる(情報の拡散)。こうならないように複数の誰もが、ただ一つの正しい情報にたどり着くことができるようにした管理。これを集中管理というのではなかったか。
一箇所のハードディスクに保存しても情報拡散は起こる。複数のハードディスクであったとしたも情報が拡散されずに管理されていれば何万人の人がアクセスしても同じ最新情報を得ることができる。その仕組み(システム)を集中管理という。

そしてこの、散逸(さんいつ)という難しい言葉。情報の散逸のことである。
情報の散逸とは、一定の場所に蓄積されているにも関わらず、どんどん新しい情報や似た情報で膨れ上がって、整理しきれずワケ分かんない状態になってしまうこと。つまりローカルのディスクにすべてを格納しようが、社内サーバであろうが、Webであちら側に格納しようが情報のゴミ化はおこってしまう。
情報の散逸をおこさないようにするための手法が「巨大HDD」への格納ではないだろう。 手法は別物だ。その別物の一つとして、著者自身が「グーグルデスクトップがある」と書いてあったではないか。
情報をカテゴリーに分けることは、含まれるプロパティが多岐にわたるためどこかで無理が生じる。
Yahoo!が主たる検索エンジンをディレクトリ型からロボット型に切り替えたのもこのあたりにあったのだろう。
ローカルエリアでの検索はグーグルデスクトップだけではなくマイクロソフトにもある(Vistaでは標準装備)。もちろんWebではYahoo!も、さらにmooter、Ask、百度などなど情報検索の技術はただただビックラらこいたとしかいいようがない。何でこんなことができるんかいなと思うのみなり。
情報の散逸をなくすには「ちゃんと整理する」「検索技術にたよる」ことになるが、これらのノウハウをしっかり書いてくれたらこの本の題名である「知的生産術・グーグル化」に見合った内容になるんだけどね。
私たちはこの手法に苦労しているのであって、それを知りたくてこの本を読み始めたのでは・・・・あ、単にはやりだったもんだから読み始めたのだったか。

そして、こんなことも

私の専門は会計ですが、企業の決算を見る時には、損益計算書だけでは不十分なので、必ず貸借対照表とキャッシュフロー計算書を合わせて見ることにしています。(書籍より引用)
はあ?
会計の専門ではなくても、企業の決算を見る時にはこれら財務諸表を解読するのはあたりまえでしょう。
私は会計の専門ではないどころか、コンビにでポテトチップスを買うときですらつり銭勘定の引き算がすぐにできなくてあたふたするくらい計算能力が貧弱だ。だけど、この財務諸表くらいは知ってる。
会計専門のお方が「貸借対照表もキャッシュフロー計算書も見るようにしています」ときたもんだから、びっくりするよ。
あと、

毎月50~100冊の本を買ってる、90%は捨ててるか寄付してる。(書籍より引用)
おもしろいのは、本のカバーには毎月「100冊の本を読んでいる」のうたい文句があり、本文には上記の通り「50~100冊買っている」になっている。
この数字と表現に違いをとやかく言ってもしょうがなさそう。

とか、

3~6ヶ月ほどWebでアフィリエイトをやってみた。一ヶ月あたり52,500円しか手に入らない。ブログ更新などの手間がかかるので、時間給に換算すると割りに会わない。(書籍より引用)
あはは、完全に読者をバカにしている。
ブログ更新は手間がかかるばかりで金儲けにつながらないので駄目。それなのに、別のページでは執筆能力を高め、本を出版する意気込みでブログを有効に使いなさい、とくる。
これっていったい何。

さらに、
特定メーカーや商品名がめったやたらとでてくる。型番までも記載されていたりする。ページの最後にはソフトや機器を紹介しているカラー写真もあり、冒頭に書いた「少年雑誌のような構成」というのはこのことだ。
広告宣伝としての商売に関連しているのかいないのか、どっちでもいいんだけど、書物の威厳をなくしてしまっている。私とて、わざわざこんなどうでもいいことをことを書いたりするつもりはなかったけれども、あまりにも鼻持ちなら無い内容なのでこんなことまでついつい。大人気ないね私。

最後に総まとめとして、この本の副題である「自分をグーグル化する方法」というのはいったい何だったのか(私には)皆目わからなかった。
え、この本の題名ですか。
効率が10倍アップする---新・知的生産術---自分をグーグル化する方法
と表紙に印刷されてます。


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